アクネ菌を殺菌するとニキビが増える？ニキビとアクネ菌の関係とは

2.皮膚を守る常在菌

アクネ菌以外にも皮膚に通常生息している常在菌はいくつもあり、200種類以上同定されています。皮膚常在菌は肌にある皮脂や汗などをエサとして生息し、その数はなんと１兆個！ほどあると言われています。

いっぱい菌が肌の上で生きていると思うと気持ち悪いと思うかもしれませんが、皮膚常在菌が安定して生息しているのが健康なお肌の状態なのです。

アクネ菌のように、お肌に有益な働きをしているが、増えすぎるとトラブルになるものを日和見菌と言います。お肌に有益な菌は善玉菌、お肌に有害な菌は悪玉菌と呼びます。

皮膚に悪い菌がなぜ常にいる状態なのでしょうか？例え、有害な菌であってもそれが生息していることで免疫能力や抵抗力を強くする働きがあるためだと言われています。悪役も存在する理由があるのですね。

2-1.表皮ブドウ球菌

正式名称は「スタフィロコッカス エピデルミディス」。アクネ菌よりさらに覚えられない名前ですね。ブドウ房状の表皮菌という意味だそうです。その名の通り、顕微鏡で見るとぶどうの房のように球体が連なる形をしています。

■　肌の善玉菌代表

表皮ブドウ球菌はアクネ菌とは違い、空気を好む菌（好気性）なので、肌の表面に存在し、皮脂をエサにしています。皮脂を食べた後は脂肪酸とグリセリンに分解します。

脂肪酸は酸性なので皮膚を弱酸性に保つ働きをし、病原菌の侵入や増殖を防いでくれ、グリセリンは保湿する役割があります。

このように皮膚の上では良い働きのある菌なのですが、カテーテルなどの医療器具に付着し体内に入り増殖すると化膿する場合があります。

■　美肌菌として注目されている

美肌効果が高いことから、テレビなどで特集され「美肌菌」として注目されている表皮ブドウ球菌。それはお肌をしっとりと保つグリセリンを作ってくれることから、そう呼ばれているのです。

グリセリンは化粧品にも配合されている保湿成分です。肌の角質層に水分とグリセリンを与えると水分が蒸発しにくくなり、柔らかくてもちもちのしなやかな肌を作ってくれるのです。

■　汗をいい匂いに変えてくれる

表皮ブドウ球菌は皮膚の汗や皮脂を食べています。その際に弱酸性の脂肪酸を産出し、皮膚を常に弱酸性に保ってくれています。表皮ブドウ球菌の出す脂肪酸はいい匂いのするものなのです。

汗臭さの原因となる黄色ブドウ球菌や真菌はアンモニア臭の不快な臭いを出し、アルカリ性を好みますが、弱酸性の皮膚では増殖できないのです。

2-2.黄色ブドウ球菌

正式名称は「スタフィロコッカス・アウレウス」。黄金色のブドウ房状という意味だそうです。表皮ブドウ球菌と同様にぶどうの房のような形をしています。

培地上で培養したときに黄色の色素を産生するのことからこの名が付きました。皮膚表面に存在し、特に鼻腔内に多く生息しています。

■　肌の悪玉菌代表

黄色ブドウ球菌は傷の化膿や皮膚炎など皮膚のトラブルを起こす悪玉菌です。表皮ブドウ球菌が十分に存在している場合は黄色ブドウ球菌によるトラブルは起こりません。

表皮ブドウ球菌が少なくなり、肌がアルカリ性に傾くと増殖し、引っかき傷などの傷口から入り痒みや炎症を起こしたり化膿させたりします。

■　食中毒の原因にも

黄色ブドウ球菌って食中毒の原因にもなる菌なのです。え！？食中毒の菌がいつも肌にいるの？と驚くかもしれません。食品中で黄色ブドウ球菌が増殖してエンテロトキシン毒素を産生し、その食物が体内に入ると食中毒を起こします。

2-3.マラセチア菌

マラセチアは酵母菌です。普段は存在しても問題ありませんが、やはり増えすぎると脂漏性皮膚炎やフケなどを引き起こし、最近ではアトピー性皮膚炎との関連も指摘されています。

アクネ菌と同様に皮脂を脂肪酸とグリセリンに分解しますが、脂肪酸が酸化されると毒性のある過酸化脂質に変化し、皮膚の炎症を起こさせる要因となります。

■　背中ニキビの原因かも

顔にできるニキビは「尋常性ざ瘡」と言い、毛穴に皮脂が詰まることで発生しますが、背中、肩、胸などに出来るニキビはマラセチア菌が原因となっているマラセチア毛包炎かもしれません。

通常のニキビとの違いは、小さく赤いブツブツです。マラセチアはカビの一種なので皮膚科などで処方される抗菌剤を使用すると治りやすいのが特徴です。

■　愛犬の外耳炎も

実はペットを飼っている人にはマラセチアというのは馴染みのあるものなのです。それは犬がよく罹る外耳炎の原因となっているからです。

マラセチアは犬や猫の皮膚や耳などにも存在する常在菌ですが、抵抗力の落ちている時に繁殖し、外耳炎や皮膚炎を引き起こしてしまいます。

脂質と湿度が好物の菌なので耳が垂れている犬種は耳が塞がれていることからマラセチアが繁殖しやすく、外耳炎にかかりやすくなってしまいます。